入札(にゅうさつ)
入札とは、物品や不動産、工事などを売買・契約する際に、複数の希望者(買主や請負業者)が価格や条件を提示し、最も条件の良い者を選ぶための手続きです。不動産の分野では、特に「競売(けいばい)」においてこの仕組みが用いられます。
競売にかけられた不動産については、裁判所の定めた「売却基準価格」をもとに、買いたい人たちが入札書を提出して希望購入価格を提示します。入札期間が終了すると、最も高い金額を提示した人が「最高価買受人(さいこうかばいうけにん)」として落札者に選ばれます。
このような入札方式は公平性と透明性を保つことが目的ですが、債務者(不動産の元の所有者)にとっては、相場より低い価格で物件が売却されるリスクがあります。特に住宅ローンの滞納が原因で競売にかけられた場合、入札で得た売却代金だけでは借金を完済できず、差額が残ってしまうこともあります。
そのため、任意売却では競売のような入札制度を避け、債権者の同意を得ながら市場価格に近い形での売却を目指します。入札は一見公正な仕組みに思えますが、債務者にとっては大きな負担を残すことがあるため、任意売却という選択肢が検討されるのです。